冷たい空気の中、初詣に行くのは気持ちが良いものです。新年を迎えられたことに感謝し、家族と共に心身を清めるひと時は大切な時間です。
◾️何度みても感動
冬休み期間中に読み返した書籍の一つに「生涯現役論」(新潮新書)があります。プロ野球史上で最も長く現役生活を続けた山本昌さんと、投資ファンド会社の代表である佐山展生の共著です。
読み返したきっかけは、年末のテレビ放送でWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の特集が放送されていたことでした。
Amazonプライムで「憧れを超えた侍たち−世界一への記録−」を見ていましたので、「孤独のグルメ」までの繋ぎのつもりでした。ですが、番組があまりに面白く、目が離せなくなりました。
不調に苦しむイチロー選手が韓国戦で決勝のタイムリーを打ち、ダルビッシュが締めた2009年大会。番組の中で、当時のキャプテンだったイチローさんのインタビューがありました。
「(ダルビッシュ投手が)チームのD N Aを繋げてくれた。新しい世代がやってくれた、ということで終わらなかった」とのイチローさんのコメントが印象的でした。
もっとも、2023大会は優勝に至るドラマが語られがちですが、問題点もあります。この点をダルビッシュ投手はインタビューの中で指摘していました。
◾️ヘッドスライディング
優勝した2009年のW B Cでしたが、開催前は大騒動だったことを覚えてますでしょうか?
当初は星野監督を想定していたものの、北京オリンピックの結果を受けてW B C監督を辞退したため、最終的に巨人の原監督が就任。
最後は日本が優勝するというドラマでしたが、そこに至る道は簡単ではありませんでした。
2009年大会では候補選手の中で、中日ドラゴンズに所属していた選手全員が代表入りを辞退します。このときの中日ドラゴンズは落合監督でした。ちなみに、山本昌さんもこの当時は中日ドラゴンズの現役のピッチャーです。
出場辞退についての落合監督の説明は「W B Cに出場して故障したら、誰が補償してくれるのか?」という疑問の投げかけでした。
当時の落合監督が選手に禁止していたことが「ヘッドスライディング」。選手が怪我をしたらチームも困るし、選手自身が生活に困る事態になりかねないというのが、その理由です。
年末のテレビ番組でのダルビッシュ投手が指摘した点も怪我した場合の補償でした。
「開催時期・怪我をした時の補償とか問題がある 。N L Bとかが改善していかないと、自分たちが望むような大会になっていくのは時間がかかってしまう」
このコメントからは選手サイドからすると補償制度が十分に準備されていないことが伺えます。
◾️生涯現役
下半身の故障にくるしみながらも、50歳まで選手として現役を続けた山本昌選手。引退会見のコメントが素晴らしかったです。
「やり残したこともあるし、やり切った感じもある。悔いはあるが、引退の決断に後悔はない」
山本昌さんの同書の中にドラゴンズOBの杉下茂さんの話がでてきます。惜しくも2023年6月に亡くなられましたが、90歳を超えてもキャンプの臨時コーチとして3時間立ったまま指導していたそうです。
オーナー経営者の現役期間は自分で決めることができます。しかしながら、「生涯現役」は「生涯社長」を意味しません。
また、年齢に関係なく、意図せず事故、怪我、病気などで経営の一線に止まれない可能性は誰しもあります。
その時の備えをどうするか、というのは大事な問題ではないでしょうか?
保険に入っていれば、というのも一つの対応方法ではあります。しかし、保険は金銭が入ってくるけれども、経営はしてくれません。
経営者であり、主要株主でもあり、家族の長でもあるオーナー経営者のためのリスクヘッジは極めて重要です。
事故や病気がなくても、人間には寿命というものがあります。いずれにしても、事業の承継というのは避けられません。事業を承継する時こそ、リスクが最大になるともいえます。
生涯現役の在り方も人それぞれではあります。オーナー社長が手塩にかけて育てたものを、次の世代に「繋げる」ための手段として、「信託」もあります。大切なのは使い方ですね。
誰に、何を、どのように襷(タスキ)を繋いでいくか、というのは生涯現役を貫くためにの仕組みについて、検討してみてはいかがでしょうか?
なお、山本昌さんは同書の中で、ちなみに、大谷翔平選手について「約80年プロ野球の歴史において一番の化け物」評しています。
日本人がメジャーリーガーを超えていく時代になりました。大谷選手は二刀流、あるいは一刀流でも、いつまで現役を続けてくれるのが楽しみです。
新たな挑戦の年が始まりました。本年もよろしくお願いいたします。