同族会社の繁栄する秘訣

 

「ふとした時に、読み返す本ってありますよね」とD社長。出版関係のお仕事をしていたので、選球眼は特筆ものです。果たして、自分がどのような本を読み返すか、気になりました。

 

1.同族会社が生き残り、繁栄する秘訣

学生時代の頃から親しんでいるのがドラッカーの本です。近頃、何冊かを読み返していたのですが、一番多く読み返したのが、「実践する経営者」でした。読み返すたびに、気づきがあります。

最も多く読み返したのは、同族会社が生き残り繁栄する秘訣です。ドラッカーは最初に3つの原則を提示します。

 

原則1:できの悪いものを働かせてはならない

原則2:経営陣に一族でないものを一人は起用せよ

原則3:専門的な地位には一族でない者の起用が必要であり、一族の者と同等に扱う

 

いずれの原則も、創業家ファミリーとビジネスの関係です。ビジネスの中における創業家ファミリーとノンファミリーに関する原則ですが、日本で言うところの「番頭さん」の存在意義が分かります。

しかし、この3つの原則を忠実に守っていても、後継者をめぐって問題が起こる頃があります。ファミリービジネスでは承継こそが生き残るか否かの生命線です。ドラッカーは4つ目の原則を提示します。

 

原則4:後継者にかかわる意思決定は、利害関係の無い、一族でない者にゆだねる

 

ファミリーの中の一員がそれぞれの思惑を持つ前に、外部に後見人を見つけておきなさいということですね。さらに、財務や税務の対策の必要性にも言及しています。もっとも、我が国の場合は、財務や税務の対策に偏りがちな傾向に問題があるように感じます。

そして、最後に4つの原則の根底にある理念についての決めセリフです。

 

理念:「同族会社」という言葉で鍵となるのは同族ではない。会社の方である。

 

同族会社はファミリーがビジネスに対して奉仕した時のみ生き残り、繁栄するのであり、その逆ではないと締めくくります。

 

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2.チーム型経営

同族会社(ファミリービジネス)の経営承継はワンマン体制からチーム体制への移行がポイントであると言われます。経営チームとドラッカーの指摘するチームの概念は必ずしも一致しませんが、チームの種類を3種類に分類しています。

 

チーム1:野球型(選手は固定された役割を担い、チームとしてプレーしない)

チーム2:サッカー型(選手のポジションはあるが、チームとしてプレーする)

チーム3:テニスのダブルス型(基本ポジション以外は臨機応変)

 

これらのチームについて、それぞれに強み、弱みがあるが、3つの型を併用することはできない。別の型への転換もできない。チームは道具であり、目的を達成するために経営者がどの型(道具)を使うかについて難しい決断を迫られるとドラッカーは論じます。

ファミリービジネスの経営承継を考えたとき、後継者をどのようなチームでサポートするかは現在の経営者が環境を整える必要があります。少なくとも、自分の右腕(番頭さん)がいたように、後継者を支援するチームは必要ではないでしょうか。

歴史的に振り返りましても、後継者が深刻な争いに巻き込まれながらも、生き残っているときは優秀な右腕がいます。例えば、ジュリアス・シーザーや上杉謙信の後継者などです。

 

3.リーダーシップ

ファミリービジネスの後継者に求められるものの一つにリーダーシップがあります。この点についてドラッカーはリーダーシップは手段にすぎず、目的が大事である。リーダーシップにカリスマ性が不要であり、逆にカリスマ性がリーダーをダメにすると論じます。

 

リーダーシップ1:リーダーシップとは仕事である

リーダーシップ2:リーダーシップとは責任である

リーダーシップ3:リーダーシップとは信頼である

 

この中でも3つ目の信頼に対するコメントに強く惹かれます。付き従う者がいるのがリーダーであり、そして賢さでなく真摯さに支えられるのがリーダーシップであるという解説しています。

ファミリービジネスの後継者としてチームを率いるときに求められるものは、付き従う者からの信頼であり、目的の達成に対する真摯さである、ということですね。

 

 

【まとめ】

本コラムではP.F.ドラッカー「実践する経営者−成果をあげる知恵と行動」(ダイヤモンド社2004年)を参照しています。

ファミリービジネスに関する部分を選び、繁栄する同族会社、チーム型経営、リーダーシップについてのコメントを並べてみたのですが、原理・原則に関するもののため、今でも十分に通用します。

リーダーシップに関して「信頼」という言葉が出てきますが、原著では「trust(トラスト)」なのでしょうか。信頼関係のあるチームで仕事をすることこそ、人として生きがい、やり甲斐を感じる時間なのだと思います。

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