「変える覚悟」を持つということ

「見極めどきが大事。自分のやり方だの、生きる道だのと決めつけると危ない。時代、お客様に合わせていかないと」が口癖のMさん。もともとは足袋の製造会社を経営していたのですが、今は悠々自適な生活です。

 

1.覚悟

Mさんとお会いするときに思い出すのは、池井戸潤さん原作の「陸王」です。ご存知方も多いと思いますが、以前T B Sでドラマ化されており、創業100年の足袋製造会社「こはぜ屋」を舞台としています。

ドラマとはいえ、銀行対応、新規事業、後継者問題、などがリアルに描かれています。素敵な言葉が散りばめられた作品なのですが、興味深いものの一つが、やむなく会社の売却を決めた社長に対して、会社の顧問が声をかけた一言です。

「社長さんよ。ここまで来てあんたの覚悟を惑わすつもりはないんだが…。本当にもう、手はねえのかい?」

この言葉を受けて、社長は会社売却をやめて、次なる手立てを講じます。迷いながらも自分の判断を捨て、新たな道を選びます。

改めて、この番組の紹介H Pタイトルを見ると「自分を変える覚悟はあるか?」とあります。確かにこの切り口で見ると、登場人物が自分の思いや考え方を変えるシーンに気がつきます。

社長だけでなく、後継者の息子の就職問題、銀行の担当者などの登場人物が、自分を変える局面と向き合うことになります。この作品の底流を流れるテーマは「自分を変える覚悟」だったのですね。

 

2.社長の右腕

社長の右腕となるのは番頭さん。会社ごとに求められる役割は様々でしょうが、一般的には財務をメインとした管理面のまとめ役です。社長は戦略を描く攻撃を担当して、番頭さんは財務面で戦略を支える守備担当。

このドラマの中でも良い味を出していたのが、番頭さんを演じていたのが志賀廣太郎さん。惜しくも2020年に亡くなられています。「こはぜ屋」の財務や銀行交渉は誰が引き継ぐのだろう、と心配してしまいます。

番頭さんに何かあっても社長がいれば何とかなるでしょうが、組織のダメージは少なくありません。後継者の育成同様に、後継者のサポートをする人材の育成も必要です。歴史的に見ても適切なサポート役の有無が明暗を分けています。

戦国を象徴する武田信玄と上杉謙信。信玄の後継者である勝頼には適切な参謀がおらず、謙信の後継者となった景勝には直井兼続がいます。先代までのやり方に固執せず、番頭の意見を尊重した上杉家は明治まで家名を保ちました。

自分変える覚悟は、自分だけでは出来ません。だからこそ、現社長を中心とした経営から、後継者を中心としたチーム体制への移行を視野に入れておく必要があります。近年では番頭さんに関する研究も見かけるようになりました。

 

3.会社を支える外部の人材

番頭さんを会社内部の中心的存在とすると、会社外部のサポーターとして考えられるのが、銀行や税理士です。「陸王」では、銀行員の出番はありましたが、税理士の出番はなかったと記憶しています。

銀行担当者も「こはぜ屋」を支えるために頑張ります。

「新しいことを始めるのに「実績」が伴わないのは当然じゃないでしょうか。」

設備投資ための稟議を通すべく支店長に掛け合った時のセリフです。ドラマの中で銀行の担当者も「自分を変える覚悟」を試されます。

経営者の日常相談先として上位にいるのが税理士なのですが、残念ながら出番はありません。出番がないのは意図的なのだろうか、と思ってしまいます。「自分を変える覚悟」がない職業ということでしょうか。

税理士の仕事は会社の数字に携わる大事な業務であるには違いないのですが、出来上がる数字が示すものは過去の結果です。未来を思い描くには、そこからもう一つ別のステップが必要になります。

つまり、過去の延長線上でなく、新たな未来を描くために必要なものは、「社長の戦略」と「番頭の財務」です。もちろん組織という土台と経営陣という屋台骨がしっかりしていないといけません。

人材のリソースに制約の多い中堅・中小企業では、外部戦力の活用が重要な意味を持ちます。金融機関、税理士ともに企業には欠かせない存在ですから、有効活用すべきです。第三者の目線は意思決定に重要だからです。

ただ、100%信頼するものでもないことは、いうまでもありません。

 

<まとめ>

望むと望まざるとに関わらず、変革を求められる時がきます。

自分を変える覚悟はありますか?