参考レポート

2022年12月13日
企業オーナーが自社株式を承継するための信託商品を確認してみました。みずほ信託銀行は「事業承継信託」、りそな銀行は「自社株承継信託」とういう商品をHPで確認できましたが、他の信託銀行では特に記載がありませんでした。

みずほ信託銀行は、「事業承継信託(遺言代用タイプ)」と事業承継信託(生前贈与タイプ)」の2種類。
りそな銀行は、「自社株承継信託【遺言代用型】」と「自社株承継信託【議決権留保型】」の2種類。
いずれの会社も、遺言の代わりに信託で自社株式を承継する「遺言代用タイプ」と、現経営者に自社株式の議決権を留保したまま後継者に自社株式の財産権(信託受益権)を贈与する「議決権留保付き生前贈与タイプ」の2種類を商品化しています。
2行の商品は、大枠では似ていますが、HPの記載内容で確認できる範囲内において、信託の対象となる財産、信託報酬などは違うようです。

信託銀行が受託者となって管理する商事信託は、オーダーメイドに信託を組成する民事信託に比べると、法務や税務面の論点を検証した上で商品化されているため、安心感があります。オーナー経営者が意図することと合致するのであれば、有力な選択肢になりえます。HPの記載内容や昨今の新聞記事などでは、オーダーメイドの信託への取り組む旨の報道もなされていることから、個別事案への対応も場合によっては可能なのかもしれません。

 

2022年11月10日

日本経済新聞に『東大と三井住友信託銀行、ファミリービジネスに関する共同研究を開始』との記事が出ておりました。2022年3月には三菱UFJ銀行が神戸大学と「ファミリービジネス研究教育センター」を設置するとの報道がなされております。

大手金融機関や大学がファミリービジネスに関する研究に力を入れることは好ましいものと考えます。米国では、ファミリービジネスの一族に対するカリキュラムを提供しているビジネススクールも存在しており、アカデミズムの一翼を担っています。

一方、国内金融機関の営業現場は、短いサイクルでの異動を前提とした人事ローテーションが前提であるため、金融機関が同族会社(ファミリービジネス)と良好な取引関係を維持していくためには、組織的な体制や仕組みの構築が欠かせません。

我が国の経済を支える同族企業が誇りを持って、長く繁栄していくためにも大学等による後継者の教育面での支援、金融機関による財務面での支援が充実することは必要不可欠であり、研究成果が営業現場の取り組みに活かされることを期待します。

 

2022年11月4日

大手町にてファミリービジネス研究会を開催しました。金融機関や会計事務所などの第一線で活躍する実務家との意見交換を通じて、ファミリービジネスへの経営支援や取り組み状況について情報交換しました。個人的には、一部の信託銀行がパッケージ型の信託商品ではなく、手間のかかるオーダーメイド型の信託商品を提供してコーポレート・ガバナンスとファミリー・ガバナンスの両面からオーナー企業の支援を開始しているとの情報に強い関心を持ちました。

かつてプライベートバンクやプライベートバンキングという言葉が持て囃された時代がありましたが、我が国の金融機関のあり方はさほど変わらなかった印象があります。2006年12月に信託法が改正されてから約16年経ち、信託業界を取り巻く環境も大きく変わっています。特に、信託銀行や信託会社が中心となる商事信託だけでなく、主に弁護士、司法書士、などの法務系の士業が主導する民事信託は、地域金融機関や不動産会社との連携により、不動産オーナーをお客様として市場が拡大しています。反面、企業オーナーが民事信託を活用するケースは、それほど多くはないと感じています。

まだまだ十分に活用されているとは言い難い信託制度ですが、誇りある同族会社(ファミリービジネス)の育成、支援のために、信託活用コンサルティングの一翼を担うことが、我が社の存在意義です。

 

2022年9月22日

日本経済新聞に『統治・承継から「家訓」策定までオーナー企業支援 みずほ信託など金融機関、課題解決を競う』との記事が掲載されております。金融機関のオーナー企業支援の目線は、経営面や税務・税務面が中心との印象がありましたが、「ファミリー・ガバナンス」にも進出しているようです。みずほ信託プロダクツ法務研究会編の「新たな信託ソリューションと法務–円滑なM&A・事業承継等のために(きんざい)」は同社の実務での取り組みが、簡潔に分かりやすく記載されており、興味深く拝見しました。

 

2022年9月17日

米パタゴニアの創業者であるイボン・シュイナード氏は、会社の議決権付株式の100%を会社の価値観を守るために設定されたPatagonia Purpose Trustに信託し、無議決権株式の100%を環境危機と闘い自然を守る非営利団体Holdfast Collectiveに譲渡する旨を公表ています。

Patagonia社のHPに掲載されているニュースリリースの中で、次の点に強く関心を持ちました。
第一に、「Patagonia Purpose Trustは、パタゴニアのバリューとミッションを守ることだけを目的として設立」されている点です。Patagonia Purpose Trusは、パタゴニア社の株主総会において、取締役の選任などの重要決議について議決権を行使することにより、強い影響力を持ちます。その結果、パタゴニア社の経営陣がバリューとミッションを遵守しているか、コーポレートガバナンスが期待できます。
第二に、シュイナード・ファミリーが、「Patagonia Purpose Trustに対して指針を示し、そのリーダーシップチームの選出と監督」の役割を担うことを明言している点です(Patagonia社のHPより)。つまり、ファミリーがトラスト(信託)のリーダーシップチームの選出と監督を行うというファミリーガバナンスを実践する仕組みとなっていることです。

まさに、パラレル・プランニング・プロセス・モデルの実践であると受け止めました。